【派遣プログラムの内容について】
大阪大学を中心とするCampusAsiaプログラム「世界的健康問題の解決に向けた医学研究グローバルリーダー育成プログラム」は日本・韓国・中国の3か国でコンソーシアムを形成し、老化制御に関する共同研究やダブルディグリー取得を目的とする。今回はこのCampusAsiaプログラムの短期トライアングルプログラムの一環として、2017年3月5日から26日までの3週間、北京大学医学部 公衆衛生大学院の王培玉教授の下で中国における公衆衛生の現状と公衆衛生に関する研究について知見を広げた。中国の公衆衛生に関する講義・研究プロジェクトの見学・大学病院や地域の病院などの施設見学・今後の共同研究に関する意見交換などに加えて、現地の大学院生と生活を共にしながら様々な論文を通じてディスカッションをする機会もあり、お互いの知見を深めた。
【学習成果について】
公衆衛生は生活・文化に密着した領域であり、食事や運動、性格、生活環境など人を取り巻くすべての要因が関与する。北京に実際に赴き、現地の方と共に生活した今回の経験は、中国の生活や文化を理解するだけでなく、今後の私の研究生活にも大きな影響を及ぼすものであった。日本や中国では共に虚血性心疾患や脳卒中などを含めた生活習慣病が大きく取り上げられているが、その背景は若干異なっている。例えば、日本では食事の欧米化が疾病構造の変化に与えた影響は大きいと言われているが、中国ではファストフード店などの規模は日本よりも小さく、中国の伝統的な料理を口にすることが大半である。一方で、一皿の量が非常に多く、一食の食品数が少ないこと、また脂質や塩分が多いことから肥満を誘発する環境も整っているように感じた。生活・文化は現地に赴くことで得られる情報であり、生活・文化背景を考慮しながら研究を進めることの重要性を実感した。
【海外での経験について】
海外で過ごした経験の少ない私にとって、今回の経験は非常に実りのあるものだった。観光目的で海外に行くことはあったが、今回は実際に現地の大学院生と生活を共にすることを初めて経験した。日常の研究生活や互いの国の健康状態についてディスカッションをするなど、日本の学生として日本の健康問題について俯瞰的に説明する機会が多く、ただ講義で学ぶだけでなく、現地の環境で現地の学生と相互的な交流を図ることができたことは非常に魅力的な経験であった。しかしながら、英語力不足のために十分に説明できずにもどかしい思いをした場面もあり、自分自身の英語力向上に尽力したいと強く感じた。また、今回英語圏以外の国で初めて生活し、食事や買い物などで問題が生じることに身をもって学ぶことができた。研究室に留学生が来るときは今回の経験を生かして留学生をサポートし、今回北京大学でお世話になったご恩を返していきたい。
【今後の進路への影響について】
修士一年でプログラムに参加できたことは非常に有益であった。私は学部卒業後、すぐに大学院へ進学した。そのため、進学した頃は博士課程への進学に関して視野にも入っておらず、修士課程修了後は保健師として就職することが当然だと考えていた。
しかしながら、大学院で研究室のお手伝いなどを通じて様々な世界を見せていただき、博士課程への進学にも関心を抱くようになった。現在は就職か進学かを選択する時期に差し掛かっているが、CampusAsiaプログラムによって中国や韓国とともに東アジア全体としてアジア人の健康問題に取り組むことにも魅力を感じ、今回の経験を今後の進路を考える上でぜひとも参考にしていきたい。