文部科学省「大学の世界展開力強化事業」キャンパス・アジア

参加学生の声

野口 雅哉
  • 参加プログラム:
    東アジアにおけるリスク・マネジメント専門家養成プログラム
  • 所属:
    神戸大学 大学院国際協力研究科 博士後期課程
  • 派遣先大学:
    高麗大学校 国際大学院(韓国)

「東アジアにおけるリスク・マネジメント専門家養成プログラム」に参加して

私は2019年12月から2020年1月まで、神戸大学、復旦大学(中国・上海)、高麗大学校(韓国・ソウル)が共同で実施する「東アジアにおけるリスク・マネジメント専門家養成プログラム」に参加し、高麗大学校国際大学院(Korea University, Graduate School of International Studies、以下、KU-GSIS)に1年間留学しました。ここでは、私が参加したプログラムとKU-GSISでの留学経験についてご紹介させて頂きます。

私は教育開発分野で国連機関にて働きたいという目標があり、神戸大学大学院国際協力研究科に進学しました。入学当初から海外の大学院へのダブルディグリー留学に興味があったのですが、国際開発や教育開発に関する理論や研究手法についてまず理解を深めたかったので、最初の1年間は神戸大学での学びに集中しました。研究に対する土台を構築することが出来たと実感した後には、国外の環境で国際協力に対する視野を広げたいと考え、本格的に留学を意識するようになりました。キャンパスアジアプログラムを通じて神戸大学に留学していた復旦大学と高麗大学校の学生と共に学んだことで、同プログラムへの関心が高まり、KU-GSISに留学することを決めました。神戸大学キャンパスアジア室主催のワークショップや講演会にて、高麗大学校や復旦大学の教授から学ぶ機会や学生との交流機会が多く設けられていたので、東アジアという観点から国際協力について理解を深めたいという意欲を留学前から高めることが出来ていたのは非常に良かったと思います。

私の参加した「東アジアにおけるリスク・マネジメント専門家養成プログラム」は、自然災害、歴史認識問題や経済危機といった東アジア地域の諸問題を「リスク」という観点から分析し、それらの諸課題に対して適切な対策を講じるための知識と専門性を兼ね備え、国際機関やNGOで活躍出来るグローバル人材を養成することを目標として始まりました。留学先である高麗大学校は1946年に創設された韓国有数の私立総合大学で、22の学部と20の研究科を擁しています。キャンパスアジアプログラムにおいてコンソーシアムを形成するKU-GSISは、高麗大学校の中でも特に国際色豊かで、国際政治・国際経済分野で活躍する人材の育成に注力しています。そのため、在籍している学生の半数以上が留学生で構成されており、全ての授業が英語で行われるのが特徴的です。

KU-GSISには国際学プログラムと韓国学プログラムが設置されていて、国際学プログラムにはさらに、①国際通商専攻、②国際開発協力専攻、③国際平和安保専攻、④地域学専攻に分けられています。神戸大学から留学する場合には、国際学修士か韓国学修士を取得することが出来ます。私は、国際学修士取得を目指して、国際開発協力専攻の中で必修授業や選択授業を組み合わせながら留学先での勉強を進めました。授業の中には韓国国際協力団(KOICA)で働かれている方から話を聞く機会なども設けられており、日本では学べないことも多く、非常に勉強になりました。

留学中には、高麗大学校キャンパスアジア室から留学諸手続きのサポートに加えて、KU-GSISに留学しているキャンパスアジア生に向けたフィールドスタディーや修論執筆に向けたワークショップなど手厚いサポートを受けることが出来ました。中でも、フィールドスタディーは、セメスター毎に開催して頂き、北朝鮮との軍事境界線DMZや慶州市の歴史的建造物などを見学する機会などに恵まれました。フィールドスタディー中にも、高麗大学校と復旦大学の学生とこれからの東アジアについてディスカッションする機会も設けられ、三カ国やアジア地域の将来について共に考える思い出深いものとなりました。

留学の終盤には神戸大学と高麗大学校の二つの修士論文執筆に集中する必要があり、決して楽な道のりではありませんでしたが、指導教官、神戸大学と高麗大学校のキャンパスアジア室や友人の温かいサポートのおかげで無事に留学生活を終えることが出来ました。2つの修士課程を修了した後には、神戸大学大学院国際協力研究科博士課程に進学して研究を進めると同時に、UNESCOアジア太平洋地域教育事務局(UNESCOバンコク)にてインターンシップをする機会に恵まれ、その後は同機関にて教育コンサルタントとして働く機会を頂きました。また、2020年11月に行われた復旦大学・高麗大学校・神戸大学共催の論文コンテストでは、修士論文をもとに執筆した「Equitable Access to Early Childhood Education in Lao PDR before and during the COVID-19 Pandemic」という論文で1st Prizeを頂くことが出来ました。これらは、キャンパスアジアプログラムでの経験なくして達成出来なかったと思います。

キャンパスアジアプログラムと高麗大学校での留学経験を通して多くの学びを得ることが出来たのも、神戸大学での指導教官である小川啓一教授、高麗大学校での指導教官であるRhee Dong-eun教授や、神戸大学・高麗大学校・復旦大学のキャンパスアジア室の多大な支援のおかげです。ご支援頂いた全ての方々にこの場をお借りして感謝申し上げます。この2年間で得られたものを礎に、参加プログラムの趣旨にあったような国際社会で活躍出来るグローバル人材になれることを目指して、より一層邁進していきたい所存です。