連日35度を越える猛暑日が続いた8月5日、今年も立川志の春さんによる英語落語会が開催されました。
この落語会は大学の世界展開力強化事業 TKT Campus Asia,/TiROPサマープログラムの一環として2012年にスタートしたものです。学内で4回目ともなりますと「常連さん」としてこの会を楽しみにしてくださる方もいらっしゃいます。主催者側としてはうれしい限りですが、その一方で上記のサマープログラムに参加しているのは日本に来ることが初めてで、RAKUGOという言葉そのものを聞いたことがない各国からの学生さんが大勢いらっしゃいます。志の春さんご自身も落語初心者から落語がお好きな方々まで満足していただくことには常に気を配っているそうです。ましてや英語でやる落語となると…!
さて多彩な魅力をもつ落語ですが、今年度は「想像の芸としての落語」を強調することにいたしました。
例年通り落語の成立や演技の基本などについて触れた後、今年は「寿限無」からスタートしました。あまりにポピュラーな噺でありますが、英語で聴くとまた一味違った新鮮な面白さが溢れています。落語がまったく初めての留学生たちも何度も繰り返されるJugemuに笑い出してしまいます。次の噺は「ちりとてちん」。志の春さんのバージョンでは素直な男が素晴らしいごちそうに大感激してひとつひとつ丁寧に平らげるシーンがたっぷり描かれます。次に知ったかぶりで皮肉屋の男が登場して台湾からの珍品「ちりとてちん」を口にすると、素直な男との描写のコントラストが際立ちます。みな想像の中のごちそうにうっとりし、想像の中のちりとてちんの味に悶絶し、のけぞって大笑いしました!
ここまでは古典を2作でしたが、最後の一席として志の春さんのオリジナル新作落語「だいじなもの」を演じてくださいました。これは、アメリカに出発前のちいさい孫息子に格言に見せかけた愉快なホラを吹き込むおじいさんを中心とした人情噺です。おじいさんのホラに思う存分笑った後、最後に意外な展開が待っているのでした…。
噺が終わった後、涙ぐむお客さんもいるほど会場は深い感動に包まれました。
締めくくりは会場と志の春さんの間のQ&Aタイムです。毎年とくに留学生のみなさんからユニークな質問をいただき、これに志の春さんが鮮やかに答えていくというコーナーになっています。
この日には「落語には今日演じた以外の形式はないのか」というような質問がありました。志の春さんはすかさず「あります!」と答え、人の言葉が理解できる猿の小噺を披露してくださいました。猿が人の質問に表情と身振りそぶりでテンポ良く答えていくさまに会場は爆笑しました。今年は「想像の芸としての落語」にフォーカスしていたせいか、「日本語の微妙な表現やニュアンスを翻訳することをめぐる問題」について興味と質問が集まったようでした。このような芸をどのように身に付けるか、という「落語の修業」についても関心が寄せられました。
最後に、実際に会場に来て下さった方々の感想をご紹介いたします。
「有名な上方落語「ちりとてちん」も改めて英語で聴くと新鮮に感じられました。
また、子弟制度や、どの演目も伝承だけで台本がないことなど、落語界のしきたりに会場の留学生達がとても驚いているのが印象的でした。来年もぜひまた観たいです。」
(本学職員)
「落語は生で聞いたのは初めてです。なぜ、一人語りの落語が芸になるのかとてもよくわかりました。コミュニケーション、イマジネーションという言葉を久しぶりに実感しました。(コミュニケーション:複数の人間を演じ、どうコミュニケーションをとるのかが表情もふくめ、とてもよくわかる芸でした。そして演じる者と観る者 のコミュニケーションもとても身近でした。イマジネーション:お酒を飲む、肴を食べるなどの仕草は本当にうまい!私も一緒に飲食したくなりました。)
最後に修行についての話しは印象的でした。違う世界で自分の生き方を見つけていく方法は賛否あるかもしれませんが、智恵の一つのあり方を示していると考えさせられました」(本学職員)
国際連携プランナー/特任准教授
西野可奈(文責)
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連日35度を越える猛暑日が続いた8月5日、今年も立川志の春さんによる英語落語会が開催されました。
この落語会は大学の世界展開力強化事業 TKT Campus Asia,/TiROPサマープログラムの一環として2012年にスタートしたものです。学内で4回目ともなりますと「常連さん」としてこの会を楽しみにしてくださる方もいらっしゃいます。主催者側としてはうれしい限りですが、その一方で上記のサマープログラムに参加しているのは日本に来ることが初めてで、RAKUGOという言葉そのものを聞いたことがない各国からの学生さんが大勢いらっしゃいます。志の春さんご自身も落語初心者から落語がお好きな方々まで満足していただくことには常に気を配っているそうです。ましてや英語でやる落語となると…!
さて多彩な魅力をもつ落語ですが、今年度は「想像の芸としての落語」を強調することにいたしました。
例年通り落語の成立や演技の基本などについて触れた後、今年は「寿限無」からスタートしました。あまりにポピュラーな噺でありますが、英語で聴くとまた一味違った新鮮な面白さが溢れています。落語がまったく初めての留学生たちも何度も繰り返されるJugemuに笑い出してしまいます。次の噺は「ちりとてちん」。志の春さんのバージョンでは素直な男が素晴らしいごちそうに大感激してひとつひとつ丁寧に平らげるシーンがたっぷり描かれます。次に知ったかぶりで皮肉屋の男が登場して台湾からの珍品「ちりとてちん」を口にすると、素直な男との描写のコントラストが際立ちます。みな想像の中のごちそうにうっとりし、想像の中のちりとてちんの味に悶絶し、のけぞって大笑いしました!
ここまでは古典を2作でしたが、最後の一席として志の春さんのオリジナル新作落語「だいじなもの」を演じてくださいました。これは、アメリカに出発前のちいさい孫息子に格言に見せかけた愉快なホラを吹き込むおじいさんを中心とした人情噺です。おじいさんのホラに思う存分笑った後、最後に意外な展開が待っているのでした…。
噺が終わった後、涙ぐむお客さんもいるほど会場は深い感動に包まれました。
締めくくりは会場と志の春さんの間のQ&Aタイムです。毎年とくに留学生のみなさんからユニークな質問をいただき、これに志の春さんが鮮やかに答えていくというコーナーになっています。
この日には「落語には今日演じた以外の形式はないのか」というような質問がありました。志の春さんはすかさず「あります!」と答え、人の言葉が理解できる猿の小噺を披露してくださいました。猿が人の質問に表情と身振りそぶりでテンポ良く答えていくさまに会場は爆笑しました。今年は「想像の芸としての落語」にフォーカスしていたせいか、「日本語の微妙な表現やニュアンスを翻訳することをめぐる問題」について興味と質問が集まったようでした。このような芸をどのように身に付けるか、という「落語の修業」についても関心が寄せられました。
最後に、実際に会場に来て下さった方々の感想をご紹介いたします。
「有名な上方落語「ちりとてちん」も改めて英語で聴くと新鮮に感じられました。
また、子弟制度や、どの演目も伝承だけで台本がないことなど、落語界のしきたりに会場の留学生達がとても驚いているのが印象的でした。来年もぜひまた観たいです。」
(本学職員)
「落語は生で聞いたのは初めてです。なぜ、一人語りの落語が芸になるのかとてもよくわかりました。コミュニケーション、イマジネーションという言葉を久しぶりに実感しました。(コミュニケーション:複数の人間を演じ、どうコミュニケーションをとるのかが表情もふくめ、とてもよくわかる芸でした。そして演じる者と観る者 のコミュニケーションもとても身近でした。イマジネーション:お酒を飲む、肴を食べるなどの仕草は本当にうまい!私も一緒に飲食したくなりました。)
最後に修行についての話しは印象的でした。違う世界で自分の生き方を見つけていく方法は賛否あるかもしれませんが、智恵の一つのあり方を示していると考えさせられました」(本学職員)
国際連携プランナー/特任准教授
西野可奈(文責)