【南洋理工大学】シンガポールの音楽(K.I.)

 少し前のことになるが、シンガポールに渡航して間もなく私はNational Dayを経験した。国全体を覆う熱狂。それまで画面の向こう側にしか存在しなかったシンガポール国家を肌に感じた。マリーナベイサンズでは花火が打ち上がり、街中には軍楽隊の華やかなパレードがあり、そしてそこには音楽があった。National Dayの音楽は私がはじめ想定していたような、いわゆる国家を想起させる荘厳なクラシック調の音楽ではなかった。それはポップでかつシンガポールの美しさを丁寧に描いたものだった。今回はNational Dayから出会ってきたこの国の音楽について書こうと思う。
 シンガポールは建国以来、毎年National Dayに新しい曲を発表している。初期にはそれこそいわゆる軍隊音楽のようなものが多かったようだが、先述の通り近年はかなりポップな音楽が多く、歌詞を追わなければ一見独立記念日の音楽というより普通のポップミュージックに見える。例えば2021年のThe Road Aheadを見てみよう。流暢な英語(母語なので当たり前だが)にどこかアジアンテイストの音楽に、シンガポール中の実際の風景とアニメーションが組み合わさったミュージックビデオになっていて、外国人の私が見ていても面白い。またこうしたNational Dayのポップな音楽をオーケストラでクラシック調に演奏する試みもなされており、シンガポール交響楽団のKelly Tangという作曲家が2011年のNational Dayパレードで使用されたHome*3という音楽をアレンジ*4した例もある。
 シンガポールでは日本の音楽もよく聞かれている。世界的なシティーポップブームもあってか、竹内まりやのPlastic Loveや泰葉のフライデーチャイナタウンのような懐かしの音楽もよく聞かれているし、近年のアニメの主題歌も知っている人が多い。少し意外だったのは私がよく行くNTUのジャズクラブの中で日本のフュージョン音楽がよく聞かれていることで、T-squareの宝島やカシオペアの曲(忘れてしまった)もよくセッションで演奏される。
世界と比較しても稀有なほどドメスティックな音楽市場をもっている日本と比較すると、シンガポールでは多様な音楽が聴かれておりそれもまた非常に興味深い。残り少ない日数となったがこの国の音楽を楽しもうと思う。

*1.https://www.youtube.com/watch?v=II_5jBaYmGQ
*2.https://www.youtube.com/watch?v=jQ4KMFzhSBA
*3.https://youtu.be/X9Ma4L2ghrs?si=Z-lARelzimDkC5az
*4.https://youtu.be/jQ4KMFzhSBA?si=kAn2z219RsqHVmrQ

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