Newsletter NO.15-3

清華大深圳キャンパスを訪問して

文責:合同プログラム社会理工学コース集中講義担当
イノベーションマネージメント研究科 教授 田中義敏

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これまで私は東工大-清華大学合同プログラムの集中講義として、毎年、清華大学北京キャンパス本校を訪れてきたが、今年は、北京キャンパスに加えて、深圳キャンパスにも案内され講義を行ってきた。
深圳キャンパスの正式名称は、清華大学深圳研究生院で2001年に清華大学と深圳市政府の共同で広東省深圳市南山路に設立された。

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上:深圳研究生院の先生方と(前列右から2人目が北京清華大学の楊艦科学技術社会研究所長)

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キャンパス内風景‐向こうに見えるのは学生寮(全寮制)

深圳というと、1980年に改革開放路線を謳った鄧小平により深圳経済特区として指定され、以降、急速に発展したとして名高い。鄧小平は中華人民共和国建国のリーダーであった毛沢東が亡くなった後、彼の後継者であった華国鋒から実権を譲り受け、中華人民共和国の最高指導者となり、毛沢東が推進した文化大革命によって疲弊した国の再建に取り組み、改革開放政策を推進して社会主義経済の管理下に市場経済を導入し、近代化の礎を築いた。香港と隣接する地理的重要性から1979年3月、当時は単なる田舎村であった地域を深圳市に昇格させ、1980年に改革開放路線を採用した鄧小平の指示により深圳経済特区として指定されると急速に経済発展した。深圳市のほぼ中央の小高い丘からなる蓮花山公園には、改革開放の父「鄧小平」の銅像が建てられ、市民に親しまれている。大きな立派な銅像である。この丘の上からは深圳市が一望でき、また、改革開放から発展した深圳の心臓部に位置するとのことである。
今の深圳市があるのは、ひとえに鄧小平のおかげそのものである。1980年に経済特区に指定されて以来、莫大な外国投資を誘致し製造業が発達しているが、近年は情報通信産業やサービス業も急速に発展している。深圳市の2012年の市GDPは1兆1502億元で、上海市、北京市、広州市に次いで、中国全土で第4位の市として成長している。最近ブームというか今後の新たなビジネスの柱になるか、また、いかなる規制がかけられるかが話題になっているドローンであるが、世界の70%のシェアを誇るJDIという会社も、ここ深圳に所在する企業である。

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偉大なる鄧小平の銅像の前で

清華大学深圳研究生院は、深圳地区ではいち早く大学院を設置し市の発展とともに優秀な学生の育成に取り組んできた。当初は、深圳地域の特色を生かし、地域の産業と大学の橋渡し的な役割を目標として掲げてきた。すなわち、中国南部の環境、水処理など、地域に特化した分野でのプロジェクトに集中してきた。しかしながら、地域における産学連携だけでは十分な役割を演じられず、また、すでに中国全体の中でも最も経済力を有するほどまで成長した地域の大学の使命を進化させる必要があるということである。新たな使命の一つとしては、巨大な人口を抱える中国の医療事情の改善を目指して、病院経営の質と効率の向上が緊急の課題となっている。

これまでは病院の医師が院長として病院経営に奔走してきたが、これでは十分な医療を提供することはできないとの観点から、昨年から、病院経営専攻の大学院を設置して修士学生を育成しているところであり、今後は、病院経営専攻で学び養成された専門の病院経営者を巨大中国市場の医療社会に輩出していくとのことである。
急成長する巨大中国を牽引する次世代の優秀な清華大学の学生と、日本の最高の理工系総合大学の学生による合同プログラムの更なる発展の縮図が見えた訪問であった。

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深圳市の中心にある飛翔するガルーダの翼を模したセンター街

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